ファクタリングとは売掛金をファクタリング会社へ売却することにより資金調達をする方法であり、手数料を差し引かれた代金を受け取ることができます。
最近ではかなり有名なスキームになりつつあるので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
一般的に事業者が行うのがメインのファクタリングですが、「医療ファクタリング」というものが注目を集めています。
医療とファクタリングは関係がないような気もしますが、果たしてどんなことなのでしょうか?
この記事では医療ファクタリングについて分かりやすく解説します。
医療ファクタリング①
医療機関は代金受け取りの流れが特殊であり、資金繰りに悩むことも少なくありません。
その特殊な流れについてまず理解しておきましょう。
医療機関で診療した場合、医療機関は患者さんから診療報酬の一部を受け取ります。
サラリーマンとして働いている人は3割負担ですから、窓口では実際に支払うべき代金の三分の一を支払います。
それでは残りの代金はどうするのかというと、国民健康保険・全国健康保険協会などの保険者から支払われます。
ただし直接支払われるのではなく、審査支払機関である国民健康保険団体連合(国保・国保連合会)又は社会保険診療報酬支払基金(社保・支払基金)を通します。
この複雑な手続きを経て医療機関にお金が振り込まれるまでには、大体通常2〜3ヶ月かかります。
つまり売上の3ヶ月後にしか入ってこないわけですから、その間医療機関は厳しい経営を強いられるわけです。
そんな医療機関を助けるために考えられたのが医療ファクタリングであり、一般事業で行われているファクタリングを医療機関に応用したものというわけです。
医療ファクタリング②
医療ファクタリングとは、診療報酬債権の「先払い」です。
つまり遅れて入ってくる「診療報酬債権」をファクタリング会社に売却することによって、早く現金を手にすることができるのです。
医療ファクタリングの手続きの流れとしては、
まず医療機関がファクタリング会社に診療報酬債権を譲渡します。
するとファクタリング会社が、診療報酬債権の額のおよそ8割を医療機関に直接支払います。
その後、医療機関が審査支払機関に支払い請求内容を送り、診療報酬を請求します。
審査支払機関が診察内容などをしっかりと審査し、支払うことが決まったら、本来医療機関に支払っていた支払額をファクタリング会社に支払うというわけです。
一般的な人が利用する3者ファクタリングとほぼ同じ流れになっています。
医療ファクタリング③
一言で、「医療ファクタリング」と言っても実は3種類あります。
しかし実際の内容は利用する対象と債権が異なるだけで基本的な仕組みは全て同じです。
その組み合わせについて紹介しましょう。
・診療報酬ファクタリング
対象 病院や診療所
債権 診療報酬債権
・調剤報酬ファクタリング
対象 調剤薬局
債権 調剤報酬債権
・介護報酬ファクタリング
対象 介護施設
債権 介護報酬債権
医療ファクタリングのメリットとデメリットについて
医療ファクタリングを利用するためには、メリットとデメリットについてしっかりと知っておくことが大切です。
まずはメリットについて説明しましょう。
・医療ファクタリングは審査が比較的緩い
医療ファクタリングの場合には、ファクタリング会社は医療機関を相手にするのではなく審査支払機関から診療報酬債権を回収します。
審査支払機関は非常に高い信用度が特徴の機関であり、資金を回収できない可能性はほとんどありません。
そのため、医療ファクタリングの審査は厳しくなく、比較的簡単に通してもらうことができるでしょう。
医療機関の経営状況が例えあまり良くなかったとしても、ファクタリング会社の資金回収に全く影響しません。
・医療ファクタリングは取引先が審査支払機関である
審査支払機関は非営利の民間法人であり、一般企業と違って倒産の心配がありません。
ファクタリングを行う際にトラブルが発生する可能性はほとんどないと言って良いでしょう。
さらに審査支払機関はあくまでレセプトを審査して診療報酬を支払う機関ですから、ファクタリングを利用しても関係が悪化する可能性はありません。
・医療ファクタリングは初月は最大2ヶ月分の資金調達が可能
もし医療機関が医療ファクタリングを利用すれば、初月は2ヶ月分の診療報酬を受け取ることができます。
続いてデメリットについても知っておきましょう。
それは医療ファクタリングを利用すると手数料が発生するということです。
医療ファクタリングの手数料は一般的に1%未満であり、通常のファクタリングよりもお得です。
しかし手数料が発生することには間違いなく、余計な出費になることは間違いありません。
また、医療ファクタリングは債権請求は2ヶ月先の分までしかできません。
なぜなら、そもそも医療機関が審査支払機関に診療報酬債権を請求できるのは2ヶ月先の分までだからです。
それ以上の請求ができないわけではありませんが、それなりに高額な手数料になってしまうのです。
医療ファクタリングまとめ
この記事では医療ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットなどについて解説しました。
医療機関とはいえ、経営が厳しいのは他の事業者と変わりありません。
医療機関の資金繰り改善を考えるのであれば、選択肢の一つとして持っておくと良いでしょう。